第58話 石けんと帰り道
(獅子座君♂x山羊座ちゃん♀)
冬の息が白い朝、保健室は静かで、校庭に風が走っていた。綾香は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
晴人は椅子を引いて隣に座り、「見てて、きれいにする」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上には石けん。先生の説明より先に、晴人は綾香の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
体調を整えるを始める前に、綾香が立ち止まった。「ねえ、約束して」。晴人が見返すと、綾香は石けんを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、綾香は目をそらす。晴人は一度だけ深くうなずき、「うまくいくに決まってる」と言って石けんを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。綾香は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
綾香が靴ひもを結び直している間、晴人は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、綾香は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
片づけの最中、石けんが机から転がりそうになり、晴人が反射で押さえた。その手の速さに綾香が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。晴人は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、晴人は「次は綾香のやりたいことを先に聞く」と言った。綾香は少し考えてから、石けんを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。 綾香は笑ってうなずき、晴人の袖を軽く引いた。
【終】
(獅子座君♂x山羊座ちゃん♀)
冬の息が白い朝、保健室は静かで、校庭に風が走っていた。綾香は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
晴人は椅子を引いて隣に座り、「見てて、きれいにする」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上には石けん。先生の説明より先に、晴人は綾香の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
体調を整えるを始める前に、綾香が立ち止まった。「ねえ、約束して」。晴人が見返すと、綾香は石けんを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、綾香は目をそらす。晴人は一度だけ深くうなずき、「うまくいくに決まってる」と言って石けんを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。綾香は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
綾香が靴ひもを結び直している間、晴人は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、綾香は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
片づけの最中、石けんが机から転がりそうになり、晴人が反射で押さえた。その手の速さに綾香が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。晴人は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、晴人は「次は綾香のやりたいことを先に聞く」と言った。綾香は少し考えてから、石けんを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。 綾香は笑ってうなずき、晴人の袖を軽く引いた。
【終】


