星座が示す、144通りの恋

第51話 電気毛布が転がした笑い
(獅子座君♂x双子座ちゃん♀)

 期末テストの前日、放課後の空き教室で、校庭に風が走っていた。窓の外が早く暗くなり、部屋の中だけがやけに明るく見えた。
 二人だけの合図ができたばかりの頃、実優は足をすり合わせて寒さを追い払う。竜雅は無言で電気毛布を持ってきた。
 ただの道具のはずなのに、触れた瞬間、心までほぐれていく気がした。
 二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。竜雅は「見てて、きれいにする」と返し、役割をぱっと分ける。
 実優は相手の反応を見て言い方を変える、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にある電気毛布は順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
 そのとき竜雅が「一回止めよう」と手を上げ、実優が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
 片づけの最中、電気毛布が机から転がりそうになり、竜雅が反射で押さえた。その手の速さに実優が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。竜雅は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 実優は歩きながら、ふと電気毛布を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。竜雅が「うん」と待つと、実優は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
 帰り道、竜雅は「次は実優のやりたいことを先に聞く」と言った。実優は少し考えてから、電気毛布を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言葉にしなくても、伝わるものが増えた。
【終】