星座が示す、144通りの恋

第48話 USBメモリで近づく距離
(蟹座君♂x魚座ちゃん♀)

 朝練のあと、学校の中庭で、校庭に風が走っていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
 二人だけの合図ができたばかりの頃、音羽は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。陽向は立ち止まり、鞄の中を探る。
 助けになるのがUSBメモリ。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
 途中で音羽が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、陽向は立ち止まる。
 実は陽向は昨日、同じUSBメモリをもう一つ用意していた。理由は、音羽が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。陽向は「無理してない?」と言いながら、そっと手渡した。
 音羽は受け取り、しばらく黙ったあと、「気持ち、わかる」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。陽向は「じゃ、今使おう」と前を向き、音羽はその背中に小さく「うん」と重ねた。
 帰り道の途中、陽向は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。音羽は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。陽向は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 音羽が靴ひもを結び直している間、陽向は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、音羽は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 帰り道、陽向は「次は音羽のやりたいことを先に聞く」と言った。音羽は少し考えてから、USBメモリを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言いかけた言葉が、ちゃんと形になった。
【終】