星座が示す、144通りの恋

第46話 鍋つかみとふたりの手
(蟹座君♂x山羊座ちゃん♀)

 日曜の買い物の帰り、家庭科室で、夕方の匂いがしていた。佑奈はエプロンのひもを結び直し、匠真は袖をまくった。
 二人だけの合図ができたばかりの頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは温かい飲み物を入れる。
 鍵になるのが鍋つかみで、手順がずれると味も形も崩れる。佑奈は「できるかな」と首をかしげた。
 温かい飲み物を入れるを始める前に、佑奈が立ち止まった。「ねえ、約束して」。匠真が見返すと、佑奈は鍋つかみを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、佑奈は目をそらす。匠真は一度だけ深くうなずき、「無理してない?」と言って鍋つかみを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。佑奈は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 佑奈が靴ひもを結び直している間、匠真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、佑奈は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 佑奈が靴ひもを結び直している間、匠真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、佑奈は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 帰り道、匠真は「次は佑奈のやりたいことを先に聞く」と言った。佑奈は少し考えてから、鍋つかみを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。 佑奈は笑ってうなずき、匠真の袖を軽く引いた。
【終】