星座が示す、144通りの恋

第44話 外付けHDDが見ていた
(蟹座君♂x蠍座ちゃん♀)

 冬の息が白い朝、駅の改札横で、日差しがまぶしかった。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
 『恋人』という言葉がまだむずがゆい頃、香澄は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。優真は立ち止まり、鞄の中を探る。
 助けになるのが外付けHDD。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
 写真を整理するを始める前に、香澄が立ち止まった。「ねえ、約束して」。優真が見返すと、香澄は外付けHDDを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、香澄は目をそらす。優真は一度だけ深くうなずき、「無理してない?」と言って外付けHDDを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。香澄は目を細め、「最後まで付き合う」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 香澄は歩きながら、ふと外付けHDDを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。優真が「うん」と待つと、香澄は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
 香澄が靴ひもを結び直している間、優真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、香澄は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 帰り道、優真は「次は香澄のやりたいことを先に聞く」と言った。香澄は少し考えてから、外付けHDDを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の次の約束が、自然に浮かんだ。 香澄は笑ってうなずき、優真の袖を軽く引いた。
【終】