第43話 消臭スプレーで近づく距離
(蟹座君♂x天秤座ちゃん♀)
朝練のあと、体育館の裏口で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の返事を伝えた次の週、悠生は忘れ物をそっと差し出す。風花はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には消臭スプレーがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、悠生のスマホが鳴った。画面の通知を見た風花は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
悠生は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで消臭スプレーを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
風花は深呼吸して、周りに声をかけて調整する。二人で手を動かし、消臭スプレーが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に悠生が「送れてなかった」と画面を見せると、風花は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
風花が靴ひもを結び直している間、悠生は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、風花は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
風花は歩きながら、ふと消臭スプレーを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。悠生が「うん」と待つと、風花は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、悠生は「次は風花のやりたいことを先に聞く」と言った。風花は少し考えてから、消臭スプレーを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】
(蟹座君♂x天秤座ちゃん♀)
朝練のあと、体育館の裏口で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の返事を伝えた次の週、悠生は忘れ物をそっと差し出す。風花はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には消臭スプレーがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、悠生のスマホが鳴った。画面の通知を見た風花は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
悠生は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで消臭スプレーを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
風花は深呼吸して、周りに声をかけて調整する。二人で手を動かし、消臭スプレーが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に悠生が「送れてなかった」と画面を見せると、風花は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
風花が靴ひもを結び直している間、悠生は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、風花は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
風花は歩きながら、ふと消臭スプレーを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。悠生が「うん」と待つと、風花は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、悠生は「次は風花のやりたいことを先に聞く」と言った。風花は少し考えてから、消臭スプレーを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】


