第42話 計量スプーンで近づく距離
(蟹座君♂x乙女座ちゃん♀)
新学期の一週間目、結月の家の台所で、薄い雲が流れていた。結月はエプロンのひもを結び直し、佳祐は袖をまくった。
付き合い始めて間もなく、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは夕飯の手伝いをする。
鍵になるのが計量スプーンで、手順がずれると味も形も崩れる。結月は「できるかな」と首をかしげた。
作業の途中、佳祐のスマホが鳴った。画面の通知を見た結月は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
佳祐は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで計量スプーンを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
結月は深呼吸して、角をそろえて並べる。二人で手を動かし、計量スプーンが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に佳祐が「送れてなかった」と画面を見せると、結月は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
結月が靴ひもを結び直している間、佳祐は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、結月は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。結月が「今日は助かった」と言うと、佳祐は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道、佳祐は「次は結月のやりたいことを先に聞く」と言った。結月は少し考えてから、計量スプーンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の笑い声が、しばらく耳に残った。
【終】
(蟹座君♂x乙女座ちゃん♀)
新学期の一週間目、結月の家の台所で、薄い雲が流れていた。結月はエプロンのひもを結び直し、佳祐は袖をまくった。
付き合い始めて間もなく、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは夕飯の手伝いをする。
鍵になるのが計量スプーンで、手順がずれると味も形も崩れる。結月は「できるかな」と首をかしげた。
作業の途中、佳祐のスマホが鳴った。画面の通知を見た結月は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
佳祐は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで計量スプーンを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
結月は深呼吸して、角をそろえて並べる。二人で手を動かし、計量スプーンが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に佳祐が「送れてなかった」と画面を見せると、結月は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
結月が靴ひもを結び直している間、佳祐は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、結月は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。結月が「今日は助かった」と言うと、佳祐は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道、佳祐は「次は結月のやりたいことを先に聞く」と言った。結月は少し考えてから、計量スプーンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の笑い声が、しばらく耳に残った。
【終】


