第37話 歯みがき粉から始まる相談
(蟹座君♂x牡羊座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、近所のドラッグストア前は静かで、校庭に風が走っていた。奏美は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
慶介は椅子を引いて隣に座り、「寒くない?」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上には歯みがき粉。先生の説明より先に、慶介は奏美の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
小さなケガを手当てするを始める前に、奏美が立ち止まった。「ねえ、約束して」。慶介が見返すと、奏美は歯みがき粉を両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、奏美は目をそらす。慶介は一度だけ深くうなずき、「無理してない?」と言って歯みがき粉を受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。奏美は目を細め、「迷うより一歩だ」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
片づけの最中、歯みがき粉が机から転がりそうになり、慶介が反射で押さえた。その手の速さに奏美が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。慶介は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
奏美は歩きながら、ふと歯みがき粉を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。慶介が「うん」と待つと、奏美は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、慶介は「次は奏美のやりたいことを先に聞く」と言った。奏美は少し考えてから、歯みがき粉を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。 奏美は笑ってうなずき、慶介の袖を軽く引いた。
【終】
(蟹座君♂x牡羊座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、近所のドラッグストア前は静かで、校庭に風が走っていた。奏美は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
慶介は椅子を引いて隣に座り、「寒くない?」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上には歯みがき粉。先生の説明より先に、慶介は奏美の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
小さなケガを手当てするを始める前に、奏美が立ち止まった。「ねえ、約束して」。慶介が見返すと、奏美は歯みがき粉を両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、奏美は目をそらす。慶介は一度だけ深くうなずき、「無理してない?」と言って歯みがき粉を受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。奏美は目を細め、「迷うより一歩だ」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
片づけの最中、歯みがき粉が机から転がりそうになり、慶介が反射で押さえた。その手の速さに奏美が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。慶介は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
奏美は歩きながら、ふと歯みがき粉を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。慶介が「うん」と待つと、奏美は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、慶介は「次は奏美のやりたいことを先に聞く」と言った。奏美は少し考えてから、歯みがき粉を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。 奏美は笑ってうなずき、慶介の袖を軽く引いた。
【終】


