第28話 キーボードを渡す瞬間
(双子座君♂x蟹座ちゃん♀)
日曜の買い物の帰り、公園のベンチで、薄い雲が流れていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
付き合い始めてまだ数日、澪は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。慧人は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがキーボード。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
途中で澪が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、慧人は立ち止まる。
実は慧人は昨日、同じキーボードをもう一つ用意していた。理由は、澪が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。慧人は「それ、面白くない?」と言いながら、そっと手渡した。
澪は受け取り、しばらく黙ったあと、「無理してない?」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。慧人は「じゃ、今使おう」と前を向き、澪はその背中に小さく「うん」と重ねた。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。澪が「今日は助かった」と言うと、慧人は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
澪が靴ひもを結び直している間、慧人は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、澪は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、慧人は「次は澪のやりたいことを先に聞く」と言った。澪は少し考えてから、キーボードを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の帰り道が、いつもより明るく見えた。 澪は笑ってうなずき、慧人の袖を軽く引いた。
【終】
(双子座君♂x蟹座ちゃん♀)
日曜の買い物の帰り、公園のベンチで、薄い雲が流れていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
付き合い始めてまだ数日、澪は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。慧人は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがキーボード。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
途中で澪が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、慧人は立ち止まる。
実は慧人は昨日、同じキーボードをもう一つ用意していた。理由は、澪が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。慧人は「それ、面白くない?」と言いながら、そっと手渡した。
澪は受け取り、しばらく黙ったあと、「無理してない?」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。慧人は「じゃ、今使おう」と前を向き、澪はその背中に小さく「うん」と重ねた。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。澪が「今日は助かった」と言うと、慧人は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
澪が靴ひもを結び直している間、慧人は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、澪は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、慧人は「次は澪のやりたいことを先に聞く」と言った。澪は少し考えてから、キーボードを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の帰り道が、いつもより明るく見えた。 澪は笑ってうなずき、慧人の袖を軽く引いた。
【終】


