星座が示す、144通りの恋

第24話 掛け布団で近づく距離
(牡牛座君♂x魚座ちゃん♀)

 期末テストの前日、周平の家のリビングで、薄い雲が流れていた。窓の外が早く暗くなり、部屋の中だけがやけに明るく見えた。
 告白の返事をした翌週、水希は足をすり合わせて寒さを追い払う。周平は無言で掛け布団を持ってきた。
 ただの道具のはずなのに、触れた瞬間、心までほぐれていく気がした。
 途中で水希が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、周平は立ち止まる。
 実は周平は昨日、同じ掛け布団をもう一つ用意していた。理由は、水希が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。周平は「一つずつ片づけよう」と言いながら、そっと手渡した。
 水希は受け取り、しばらく黙ったあと、「気持ち、わかる」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。周平は「じゃ、今使おう」と前を向き、水希はその背中に小さく「うん」と重ねた。
 最後の確認をしていると、水希が「ありがとう」とはっきり言った。周平は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で水希の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
 終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。水希が「今日は助かった」と言うと、周平は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
 帰り道、周平は「次は水希のやりたいことを先に聞く」と言った。水希は少し考えてから、掛け布団を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言いかけた言葉が、ちゃんと形になった。 水希は笑ってうなずき、周平の袖を軽く引いた。
【終】