星座が示す、144通りの恋

第23話 洗剤用詰め替えじょうごで丸くなる角
(牡牛座君♂x水瓶座ちゃん♀)

 朝練のあと、体育館の裏口で、薄い雲が流れていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
 一緒に帰る日が増えた頃、礼央は落ち着いて手順を並べる。瑠璃はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
 今日の担当は台所の汚れを落とす。手元には洗剤用詰め替えじょうごがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
 初めてみると、思ったより早くつまずきが見えた。瑠璃が「ここ、引っかかる」と指さす。礼央は返事の代わりにうなずき、洗剤用詰め替えじょうごを手に取った。
 礼央は落ち着いて手順を並べる。力の入れ方を見せてから、瑠璃の手の上に自分の手をそっと重ね、「このくらい」と角度を示す。瑠璃は新しい道具や仕組みを試す、真剣な目で真似をした。
 うまくいった瞬間、瑠璃の口から「それ、別の方法あるよ」がこぼれた。礼央は「でしょ」と笑い、でも目線は外して照れを隠す。二人の間に残ったのは、道具の音と、少し早い鼓動だった。
 片づけの最中、洗剤用詰め替えじょうごが机から転がりそうになり、礼央が反射で押さえた。その手の速さに瑠璃が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。礼央は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。瑠璃が「今日は助かった」と言うと、礼央は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
 帰り道、礼央は「次は瑠璃のやりたいことを先に聞く」と言った。瑠璃は少し考えてから、洗剤用詰め替えじょうごを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の視線が合うたび、心が落ち着いた。
【終】