第19話 うがい用コップが転がした笑い
(牡牛座君♂x天秤座ちゃん♀)
期末テストの前日、近所のドラッグストア前は静かで、夕方の匂いがしていた。茉優は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
大智は椅子を引いて隣に座り、「急がなくていいよ」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上にはうがい用コップ。先生の説明より先に、大智は茉優の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
途中で茉優が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、大智は立ち止まる。
実は大智は昨日、同じうがい用コップをもう一つ用意していた。理由は、茉優が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。大智は「一つずつ片づけよう」と言いながら、そっと手渡した。
茉優は受け取り、しばらく黙ったあと、「半分こしよう」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。大智は「じゃ、今使おう」と前を向き、茉優はその背中に小さく「うん」と重ねた。
帰り道の途中、大智は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。茉優は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。大智は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
茉優は歩きながら、ふとうがい用コップを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。大智が「うん」と待つと、茉優は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、大智は「次は茉優のやりたいことを先に聞く」と言った。茉優は少し考えてから、うがい用コップを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】
(牡牛座君♂x天秤座ちゃん♀)
期末テストの前日、近所のドラッグストア前は静かで、夕方の匂いがしていた。茉優は指先をそっと押さえ、息を短く吐いた。
大智は椅子を引いて隣に座り、「急がなくていいよ」と言いかけて、声の大きさを半分にする。
机の上にはうがい用コップ。先生の説明より先に、大智は茉優の表情を見て、無理をさせたくないと思った。
途中で茉優が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、大智は立ち止まる。
実は大智は昨日、同じうがい用コップをもう一つ用意していた。理由は、茉優が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。大智は「一つずつ片づけよう」と言いながら、そっと手渡した。
茉優は受け取り、しばらく黙ったあと、「半分こしよう」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。大智は「じゃ、今使おう」と前を向き、茉優はその背中に小さく「うん」と重ねた。
帰り道の途中、大智は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。茉優は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。大智は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
茉優は歩きながら、ふとうがい用コップを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。大智が「うん」と待つと、茉優は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、大智は「次は茉優のやりたいことを先に聞く」と言った。茉優は少し考えてから、うがい用コップを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】


