第139話 食器用スポンジで丸くなる角
(魚座君♂x天秤座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、部室で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の答えを伝えた翌週、悠海は音や匂いに反応して目を細める。瑞希はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日は掃除当番。手元には食器用スポンジがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、悠海のスマホが鳴った。画面の通知を見た瑞希は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
悠海は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで食器用スポンジを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
瑞希は深呼吸して、周りに声をかけて調整する。二人で手を動かし、食器用スポンジが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に悠海が「送れてなかった」と画面を見せると、瑞希は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
最後の確認をしていると、瑞希が「ありがとう」とはっきり言った。悠海は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で瑞希の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道の途中、悠海は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。瑞希は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。悠海は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、悠海は「次は瑞希のやりたいことを先に聞く」と言った。瑞希は少し考えてから、食器用スポンジを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】
(魚座君♂x天秤座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、部室で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の答えを伝えた翌週、悠海は音や匂いに反応して目を細める。瑞希はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日は掃除当番。手元には食器用スポンジがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、悠海のスマホが鳴った。画面の通知を見た瑞希は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
悠海は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこで食器用スポンジを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
瑞希は深呼吸して、周りに声をかけて調整する。二人で手を動かし、食器用スポンジが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に悠海が「送れてなかった」と画面を見せると、瑞希は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
最後の確認をしていると、瑞希が「ありがとう」とはっきり言った。悠海は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で瑞希の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道の途中、悠海は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。瑞希は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。悠海は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、悠海は「次は瑞希のやりたいことを先に聞く」と言った。瑞希は少し考えてから、食器用スポンジを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】


