星座が示す、144通りの恋

第13話 目覚まし時計で丸くなる角
(牡牛座君♂x牡羊座ちゃん♀)

 朝練のあと、通学路で、日差しがまぶしかった。並んだ足音があるだけで、道が短く感じた。
 告白の返事をした次の週、悠誠は「急がなくていいよ」と笑い、朱音は「うん」と小さく返す。
 今日は頼まれごとを終える。目覚まし時計が、二人の真ん中で目印みたいに置かれていた。
 頼まれごとを終えるを始める前に、朱音が立ち止まった。「ねえ、約束して」。悠誠が見返すと、朱音は目覚まし時計を両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、朱音は目をそらす。悠誠は一度だけ深くうなずき、「一つずつ片づけよう」と言って目覚まし時計を受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。朱音は目を細め、「迷うより一歩だ」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 最後の確認をしていると、朱音が「ありがとう」とはっきり言った。悠誠は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で朱音の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
 帰り道の途中、悠誠は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。朱音は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。悠誠は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 帰り道、悠誠は「次は朱音のやりたいことを先に聞く」と言った。朱音は少し考えてから、目覚まし時計を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。 朱音は笑ってうなずき、悠誠の袖を軽く引いた。
【終】