第134話 マウスパッドと帰り道
(魚座君♂x牡牛座ちゃん♀)
夏休みの初日、公園のベンチで、日差しがまぶしかった。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
交際が始まったばかりで、紬は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。海音は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがマウスパッド。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
作業の途中、海音のスマホが鳴った。画面の通知を見た紬は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
海音は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでマウスパッドを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
紬は深呼吸して、同じ場所を丁寧に拭き直す。二人で手を動かし、マウスパッドが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に海音が「送れてなかった」と画面を見せると、紬は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。紬が「今日は助かった」と言うと、海音は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
紬は歩きながら、ふとマウスパッドを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。海音が「うん」と待つと、紬は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、海音は「次は紬のやりたいことを先に聞く」と言った。紬は少し考えてから、マウスパッドを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】
(魚座君♂x牡牛座ちゃん♀)
夏休みの初日、公園のベンチで、日差しがまぶしかった。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
交際が始まったばかりで、紬は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。海音は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがマウスパッド。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
作業の途中、海音のスマホが鳴った。画面の通知を見た紬は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
海音は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでマウスパッドを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
紬は深呼吸して、同じ場所を丁寧に拭き直す。二人で手を動かし、マウスパッドが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に海音が「送れてなかった」と画面を見せると、紬は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。紬が「今日は助かった」と言うと、海音は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
紬は歩きながら、ふとマウスパッドを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。海音が「うん」と待つと、紬は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、海音は「次は紬のやりたいことを先に聞く」と言った。紬は少し考えてから、マウスパッドを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】


