星座が示す、144通りの恋

第125話 ラップカッターのせいにして
(水瓶座君♂x獅子座ちゃん♀)

 五月の雨上がりの朝、学校の屋上で、夕方の匂いがしていた。歩幅を合わせるだけで、いつもの道が少し特別になる。
 交際が始まって日が浅く、悠真は「それ、別の方法あるよ」と笑い、美鈴は「うん」と小さく返す。
 今日は探しものを見つける。机の上にラップカッターが置かれていた。今日はそれが鍵になる。
 作業の途中、悠真のスマホが鳴った。画面の通知を見た美鈴は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
 悠真は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでラップカッターを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
 美鈴は深呼吸して、人前でも手を振って呼びかける。二人で手を動かし、ラップカッターが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に悠真が「送れてなかった」と画面を見せると、美鈴は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
 片づけの最中、ラップカッターが机から転がりそうになり、悠真が反射で押さえた。その手の速さに美鈴が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。悠真は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 美鈴が靴ひもを結び直している間、悠真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、美鈴は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 帰り道、悠真は「次は美鈴のやりたいことを先に聞く」と言った。美鈴は少し考えてから、ラップカッターを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の同じ方向へ進む気持ちが、静かに重なった。
【終】