第122話 排水口ネットが転がした笑い
(水瓶座君♂x牡牛座ちゃん♀)
期末テストの前日、体育館の裏口で、日差しがまぶしかった。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
『恋人』と口にするのに慣れない頃、彬人は周りと違う案を出す。芽衣はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は部室をきれいにする。手元には排水口ネットがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
部室をきれいにするを始める前に、芽衣が立ち止まった。「ねえ、約束して」。彬人が見返すと、芽衣は排水口ネットを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、芽衣は目をそらす。彬人は一度だけ深くうなずき、「発想を変えよう」と言って排水口ネットを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。芽衣は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。芽衣が「今日は助かった」と言うと、彬人は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
芽衣は歩きながら、ふと排水口ネットを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。彬人が「うん」と待つと、芽衣は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、彬人は「次は芽衣のやりたいことを先に聞く」と言った。芽衣は少し考えてから、排水口ネットを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】
(水瓶座君♂x牡牛座ちゃん♀)
期末テストの前日、体育館の裏口で、日差しがまぶしかった。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
『恋人』と口にするのに慣れない頃、彬人は周りと違う案を出す。芽衣はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は部室をきれいにする。手元には排水口ネットがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
部室をきれいにするを始める前に、芽衣が立ち止まった。「ねえ、約束して」。彬人が見返すと、芽衣は排水口ネットを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、芽衣は目をそらす。彬人は一度だけ深くうなずき、「発想を変えよう」と言って排水口ネットを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。芽衣は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。芽衣が「今日は助かった」と言うと、彬人は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
芽衣は歩きながら、ふと排水口ネットを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。彬人が「うん」と待つと、芽衣は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、彬人は「次は芽衣のやりたいことを先に聞く」と言った。芽衣は少し考えてから、排水口ネットを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】


