第116話 ミトンで近づく距離
(山羊座君♂x蠍座ちゃん♀)
冬の息が白い朝、学校の屋上で、空気が少しひんやりしていた。同じ帰り道でも、隣に誰かがいるだけで色が変わる。
二人だけの合図ができたばかりの頃、健司は「時間を決めよう」と笑い、梓は「うん」と小さく返す。
今日は一緒に練習する。二人の間にミトンがそっと置かれていた。それが始まりの合図だ。
作業の途中、健司のスマホが鳴った。画面の通知を見た梓は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
健司は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでミトンを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
梓は深呼吸して、必要なことだけ短く言う。二人で手を動かし、ミトンが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に健司が「送れてなかった」と画面を見せると、梓は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。梓が「今日は助かった」と言うと、健司は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道の途中、健司は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。梓は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。健司は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、健司は「次は梓のやりたいことを先に聞く」と言った。梓は少し考えてから、ミトンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の次の約束が、自然に浮かんだ。
【終】
(山羊座君♂x蠍座ちゃん♀)
冬の息が白い朝、学校の屋上で、空気が少しひんやりしていた。同じ帰り道でも、隣に誰かがいるだけで色が変わる。
二人だけの合図ができたばかりの頃、健司は「時間を決めよう」と笑い、梓は「うん」と小さく返す。
今日は一緒に練習する。二人の間にミトンがそっと置かれていた。それが始まりの合図だ。
作業の途中、健司のスマホが鳴った。画面の通知を見た梓は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
健司は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでミトンを持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
梓は深呼吸して、必要なことだけ短く言う。二人で手を動かし、ミトンが役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に健司が「送れてなかった」と画面を見せると、梓は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。梓が「今日は助かった」と言うと、健司は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道の途中、健司は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。梓は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。健司は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、健司は「次は梓のやりたいことを先に聞く」と言った。梓は少し考えてから、ミトンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の次の約束が、自然に浮かんだ。
【終】


