第114話 保護フィルムの約束
(山羊座君♂x乙女座ちゃん♀)
期末テストの前日、駅前の本屋の前で、薄い雲が流れていた。机の上にはプリントが積まれ、チャイムの余韻だけが残っていた。
一緒に帰る日が増えた頃、二人はまだ人前で手をつなぐのが得意じゃない。けれど隣に座る距離だけは、自然に近い。
今日は宿題をまとめる。そこに保護フィルムが出てくる。小さいのに、あるとないとで安心感が違う。
二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。宗一郎は「あと十分で終わる」と返し、役割をぱっと分ける。
琴美は相手の苦手をそっと補う、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にある保護フィルムは順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
そのとき宗一郎が「一回止めよう」と手を上げ、琴美が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
片づけの最中、保護フィルムが机から転がりそうになり、宗一郎が反射で押さえた。その手の速さに琴美が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。宗一郎は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。琴美が「今日は助かった」と言うと、宗一郎は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道、宗一郎は「次は琴美のやりたいことを先に聞く」と言った。琴美は少し考えてから、保護フィルムを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の笑い声が、しばらく耳に残った。
【終】
(山羊座君♂x乙女座ちゃん♀)
期末テストの前日、駅前の本屋の前で、薄い雲が流れていた。机の上にはプリントが積まれ、チャイムの余韻だけが残っていた。
一緒に帰る日が増えた頃、二人はまだ人前で手をつなぐのが得意じゃない。けれど隣に座る距離だけは、自然に近い。
今日は宿題をまとめる。そこに保護フィルムが出てくる。小さいのに、あるとないとで安心感が違う。
二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。宗一郎は「あと十分で終わる」と返し、役割をぱっと分ける。
琴美は相手の苦手をそっと補う、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にある保護フィルムは順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
そのとき宗一郎が「一回止めよう」と手を上げ、琴美が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
片づけの最中、保護フィルムが机から転がりそうになり、宗一郎が反射で押さえた。その手の速さに琴美が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。宗一郎は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。琴美が「今日は助かった」と言うと、宗一郎は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
帰り道、宗一郎は「次は琴美のやりたいことを先に聞く」と言った。琴美は少し考えてから、保護フィルムを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の笑い声が、しばらく耳に残った。
【終】


