星座が示す、144通りの恋

第111話 シャープペンで近づく距離
(山羊座君♂x双子座ちゃん♀)

 冬の息が白い朝、職員室前の掲示板で、日差しがまぶしかった。机の上にはプリントが積まれ、チャイムの余韻だけが残っていた。
 付き合い始めてまだ数日、二人はまだ人前で手をつなぐのが得意じゃない。けれど隣に座る距離だけは、自然に近い。
 今日は忘れ物を探す。そこにシャープペンが出てくる。小さいのに、あるとないとで安心感が違う。
 二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。慎之介は「あと十分で終わる」と返し、役割をぱっと分ける。
 優花は相手の反応を見て言い方を変える、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にあるシャープペンは順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
 そのとき慎之介が「一回止めよう」と手を上げ、優花が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
 片づけの最中、シャープペンが机から転がりそうになり、慎之介が反射で押さえた。その手の速さに優花が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。慎之介は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 片づけの最中、シャープペンが机から転がりそうになり、慎之介が反射で押さえた。その手の速さに優花が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。慎之介は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 帰り道、慎之介は「次は優花のやりたいことを先に聞く」と言った。優花は少し考えてから、シャープペンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言葉にしなくても、伝わるものが増えた。
【終】