第110話 保存容器の約束
(山羊座君♂x牡牛座ちゃん♀)
期末テストの前日、七海の家の台所で、日差しがまぶしかった。七海はエプロンのひもを結び直し、将真は袖をまくった。
『恋人』という言葉がまだむずがゆい頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは温かい飲み物を入れる。
鍵になるのが保存容器で、手順がずれると味も形も崩れる。七海は「できるかな」と首をかしげた。
温かい飲み物を入れるを始める前に、七海が立ち止まった。「ねえ、約束して」。将真が見返すと、七海は保存容器を両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、七海は目をそらす。将真は一度だけ深くうなずき、「やること、書き出す」と言って保存容器を受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。七海は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
七海は歩きながら、ふと保存容器を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。将真が「うん」と待つと、七海は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
七海が靴ひもを結び直している間、将真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、七海は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、将真は「次は七海のやりたいことを先に聞く」と言った。七海は少し考えてから、保存容器を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。 七海は笑ってうなずき、将真の袖を軽く引いた。
【終】
(山羊座君♂x牡牛座ちゃん♀)
期末テストの前日、七海の家の台所で、日差しがまぶしかった。七海はエプロンのひもを結び直し、将真は袖をまくった。
『恋人』という言葉がまだむずがゆい頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは温かい飲み物を入れる。
鍵になるのが保存容器で、手順がずれると味も形も崩れる。七海は「できるかな」と首をかしげた。
温かい飲み物を入れるを始める前に、七海が立ち止まった。「ねえ、約束して」。将真が見返すと、七海は保存容器を両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、七海は目をそらす。将真は一度だけ深くうなずき、「やること、書き出す」と言って保存容器を受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。七海は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
七海は歩きながら、ふと保存容器を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。将真が「うん」と待つと、七海は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
七海が靴ひもを結び直している間、将真は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、七海は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、将真は「次は七海のやりたいことを先に聞く」と言った。七海は少し考えてから、保存容器を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。 七海は笑ってうなずき、将真の袖を軽く引いた。
【終】


