星座が示す、144通りの恋

第10話 衣類用ブラシで丸くなる角
(牡羊座君♂x山羊座ちゃん♀)

 夏休みの初日、公園のベンチで、夕方の匂いがしていた。二人で歩くと、風の匂いまで違って感じた。
 告白の返事をした翌週、夏生は「よし、今やろう」と笑い、早紀は「うん」と小さく返す。
 今日は探しものを見つける。机の上の衣類用ブラシが、二人だけの合図になっていた。
 探しもの探しを始める前に、早紀が立ち止まった。「ねえ、約束して」。夏生が見返すと、早紀は衣類用ブラシを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、早紀は目をそらす。夏生は一度だけ深くうなずき、「先に動いたほうが早い」と言って衣類用ブラシを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。早紀は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 早紀が靴ひもを結び直している間、夏生は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、早紀は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 片づけの最中、衣類用ブラシが机から転がりそうになり、夏生が反射で押さえた。その手の速さに早紀が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。夏生は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
 帰り道、夏生は「次は早紀のやりたいことを先に聞く」と言った。早紀は少し考えてから、衣類用ブラシを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。 早紀は笑ってうなずき、夏生の袖を軽く引いた。
【終】