第107話 食器拭きを渡す瞬間
(射手座君♂x水瓶座ちゃん♀)
四月の放課後、学校の屋上で、夕方の匂いがしていた。並んで歩くと、いつもの道でも景色が少し変わる。
『恋人』という呼び方がまだ照れくさい頃、拓斗は「行ってみよう!」と笑い、海帆は「うん」と小さく返す。
今日は探しものを見つける。机の上の食器拭きが、二人だけの合図になっていた。
二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。拓斗は「新しいやり方、試す?」と返し、役割をぱっと分ける。
海帆は相手の「好き」を尊重する、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にある食器拭きは順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
そのとき拓斗が「一回止めよう」と手を上げ、海帆が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
海帆は歩きながら、ふと食器拭きを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。拓斗が「うん」と待つと、海帆は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
海帆が靴ひもを結び直している間、拓斗は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、海帆は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、拓斗は「次は海帆のやりたいことを先に聞く」と言った。海帆は少し考えてから、食器拭きを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の視線が合うたび、心が落ち着いた。 海帆は笑ってうなずき、拓斗の袖を軽く引いた。
【終】
(射手座君♂x水瓶座ちゃん♀)
四月の放課後、学校の屋上で、夕方の匂いがしていた。並んで歩くと、いつもの道でも景色が少し変わる。
『恋人』という呼び方がまだ照れくさい頃、拓斗は「行ってみよう!」と笑い、海帆は「うん」と小さく返す。
今日は探しものを見つける。机の上の食器拭きが、二人だけの合図になっていた。
二人が動き出すと、近くの友だちが「手伝う?」と声をかけてきた。拓斗は「新しいやり方、試す?」と返し、役割をぱっと分ける。
海帆は相手の「好き」を尊重する、苦手そうな子の隣へ回って、やり方を静かに見せた。中心にある食器拭きは順番を守らないと失敗する。焦った誰かが先に触れてしまい、少しだけやり直しになりかけた。
そのとき拓斗が「一回止めよう」と手を上げ、海帆が「ここから」と指で道を作った。二人の声は違うのに、向いている先が同じだった。終わったあと、友だちは「息ぴったりだね」と笑い、二人は同時に顔を赤くした。
海帆は歩きながら、ふと食器拭きを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。拓斗が「うん」と待つと、海帆は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
海帆が靴ひもを結び直している間、拓斗は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、海帆は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
帰り道、拓斗は「次は海帆のやりたいことを先に聞く」と言った。海帆は少し考えてから、食器拭きを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の視線が合うたび、心が落ち着いた。 海帆は笑ってうなずき、拓斗の袖を軽く引いた。
【終】


