第106話 クッキングシートから始まる相談
(射手座君♂x山羊座ちゃん♀)
四月の放課後、家庭科室で、空気が少しひんやりしていた。由佳はエプロンのひもを結び直し、颯太郎は袖をまくった。
『恋人』と口にするのに慣れない頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは夕飯の手伝いをする。
鍵になるのがクッキングシートで、手順がずれると味も形も崩れる。由佳は「できるかな」と首をかしげた。
夕飯の手伝いをするを始める前に、由佳が立ち止まった。「ねえ、約束して」。颯太郎が見返すと、由佳はクッキングシートを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、由佳は目をそらす。颯太郎は一度だけ深くうなずき、「外の空気、吸おう」と言ってクッキングシートを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。由佳は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
由佳が靴ひもを結び直している間、颯太郎は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、由佳は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
片づけの最中、クッキングシートが机から転がりそうになり、颯太郎が反射で押さえた。その手の速さに由佳が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。颯太郎は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、颯太郎は「次は由佳のやりたいことを先に聞く」と言った。由佳は少し考えてから、クッキングシートを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。
【終】
(射手座君♂x山羊座ちゃん♀)
四月の放課後、家庭科室で、空気が少しひんやりしていた。由佳はエプロンのひもを結び直し、颯太郎は袖をまくった。
『恋人』と口にするのに慣れない頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは夕飯の手伝いをする。
鍵になるのがクッキングシートで、手順がずれると味も形も崩れる。由佳は「できるかな」と首をかしげた。
夕飯の手伝いをするを始める前に、由佳が立ち止まった。「ねえ、約束して」。颯太郎が見返すと、由佳はクッキングシートを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、由佳は目をそらす。颯太郎は一度だけ深くうなずき、「外の空気、吸おう」と言ってクッキングシートを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。由佳は目を細め、「あと十分で終わる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
由佳が靴ひもを結び直している間、颯太郎は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、由佳は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
片づけの最中、クッキングシートが机から転がりそうになり、颯太郎が反射で押さえた。その手の速さに由佳が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。颯太郎は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、颯太郎は「次は由佳のやりたいことを先に聞く」と言った。由佳は少し考えてから、クッキングシートを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の時間が、少しだけ増えた。
【終】


