星座が示す、144通りの恋

第102話 室内履きのせいにして
(射手座君♂x乙女座ちゃん♀)

 冬の息が白い朝、放課後の空き教室で、空気が少しひんやりしていた。窓の外が早く暗くなり、部屋の中だけがやけに明るく見えた。
 一緒に帰る日が増えた頃、凪紗は足をすり合わせて寒さを追い払う。蒼真は無言で室内履きを持ってきた。
 ただの道具のはずなのに、触れた瞬間、心までほぐれていく気がした。
 部屋を整えるを始める前に、凪紗が立ち止まった。「ねえ、約束して」。蒼真が見返すと、凪紗は室内履きを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、凪紗は目をそらす。蒼真は一度だけ深くうなずき、「外の空気、吸おう」と言って室内履きを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。凪紗は目を細め、「道具はそろってる?」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 凪紗は歩きながら、ふと室内履きを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。蒼真が「うん」と待つと、凪紗は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
 凪紗は歩きながら、ふと室内履きを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。蒼真が「うん」と待つと、凪紗は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
 帰り道、蒼真は「次は凪紗のやりたいことを先に聞く」と言った。凪紗は少し考えてから、室内履きを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の笑い声が、しばらく耳に残った。 凪紗は笑ってうなずき、蒼真の袖を軽く引いた。
【終】