第100話 カビ取り剤が見ていた
(射手座君♂x蟹座ちゃん♀)
帰り道の夕焼け、学校の廊下で、薄い雲が流れていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
二人だけの合図ができたばかりの頃、翔平は失敗しても笑って切り替える。咲穂はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元にはカビ取り剤があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、翔平のスマホが鳴った。画面の通知を見た咲穂は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
翔平は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでカビ取り剤を持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
咲穂は深呼吸して、忘れ物をそっと差し出す。二人で手を動かし、カビ取り剤が役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に翔平が「送れてなかった」と画面を見せると、咲穂は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
咲穂は歩きながら、ふとカビ取り剤を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。翔平が「うん」と待つと、咲穂は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道の途中、翔平は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。咲穂は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。翔平は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、翔平は「次は咲穂のやりたいことを先に聞く」と言った。咲穂は少し考えてから、カビ取り剤を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の帰り道が、いつもより明るく見えた。
【終】
(射手座君♂x蟹座ちゃん♀)
帰り道の夕焼け、学校の廊下で、薄い雲が流れていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
二人だけの合図ができたばかりの頃、翔平は失敗しても笑って切り替える。咲穂はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元にはカビ取り剤があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
作業の途中、翔平のスマホが鳴った。画面の通知を見た咲穂は、一瞬だけ黙る。昨日の返事が来ていないままだったことを思い出したのだ。
翔平は慌てて説明しようとして、言葉が絡まる。そこでカビ取り剤を持ち上げ、「今はこれを一緒にやりたい」と言い直した。逃げずに言い切ったのが、自分でも意外だった。
咲穂は深呼吸して、忘れ物をそっと差し出す。二人で手を動かし、カビ取り剤が役目を終えるころには、空気の角が丸くなっていた。最後に翔平が「送れてなかった」と画面を見せると、咲穂は「じゃあ、今日の分は目の前で言う」と笑い、短く「好き」と言った。
咲穂は歩きながら、ふとカビ取り剤を見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。翔平が「うん」と待つと、咲穂は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道の途中、翔平は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。咲穂は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。翔平は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
帰り道、翔平は「次は咲穂のやりたいことを先に聞く」と言った。咲穂は少し考えてから、カビ取り剤を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の帰り道が、いつもより明るく見えた。
【終】


