いらっしゃいませ、お姫様 ―Kitty Catへようこそ―


 私は送りに選んだ相手と薔薇園に向かう。
 満月の光は、夜の薔薇園を銀色に染めている。
 その光を受けた深紅の薔薇は、昼間とは違う妖艶な輝きを放ち、まるでガラス細工のように精巧に見える。
 辺りには、夜露に濡れた薔薇が甘い香りを放ち、息をする度に心が洗われるようだ。
 月明かりの下、一輪の薔薇に目をやると、その花びらの上には、まるで宝石のように輝く露が乗っていた。


「本日はホストクラブKitty Catへのご来店頂き、誠にありがとうございました」
 そう背後から声が聞こえてきて、扉が静かに閉められる。
 これで、私は送りに選んだ彼と二人きりになってしまった。


 彼の隣にいるだけで、なぜか心臓の鼓動がうるさく聞こえる気がする。
 でも、ふとした瞬間に彼の視線がこちらに向くと、その緊張が溶けていくような、甘い按針感が胸に広がる。
 まるで、世界に二人だけになったような静けさの中、この時間を大切にしたいと、私は呼吸を整える。


 二人きりになれたことは嬉しいけれど、もうすぐお別れの時間が近づいてきているのを、私は感じていた。


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