辺境伯はお犬様(聖女)を溺愛中!

「なんか、ビックリするくらい気分が良くなったんだけど」
 チャーリーはルークの腕を外し、一人で立つ。

「隊長、俺も苦しかったのが嘘みたいに」
「迷惑かけてすみません。俺も、もう大丈夫です」
 気を失った隊員以外、苦しそうだった隊員たちの顔色が戻っている。
 
「……どういうことだ?」
 あの犬のおかげか……?
 瘴気に侵された人まで救えるなんて。
 そんな話は父から聞いたこともない。

 それに、犬になる前は金髪の教会の壁画に描かれた女神のような姿だった。
 神なんて信じていない。
 だが、本当に女神が実在して、俺たちを救ってくれたのか……?
 
 ルークは小さな茶色の犬にゆっくりと近づく。
 犬の首の後ろをヒョイッと掴むと、ルーク以外の全員が慌てふためいた。
 
 「キャウ、キャウ!」
 待って、待って、なんでイケメンに首根っこを掴まれているの?
 せめて優しく抱っこでしょう?
 ネコじゃないんだから!

「キャウキャウうるさいな」
 ルークは犬を顔の高さまで持ち上げると、犬と視線を合わせた。
 
「キャウ」
 イケメンの顔が近い!
 ジタバタと短い足を動かす結実。

「ルーク! お犬様になんてことを!」
 幼馴染のチャーリーが顔面蒼白で注意すると、ルークはようやく普通の抱っこに変えた。

 あれ? この人、犬を抱っこするのに慣れている?
 腕の中にすっぽりはまってしまった結実は意外に居心地が良いことに驚いた。

「小さいな」
「女神様が我々のために遣わしてくれたお犬様をおもてなししなくては」
「お犬様ありがとうございます」
「お犬様に命を救っていただいた」

 なんだかよくわからないけれど、歓迎されているんだよね?
 イケメンの整った顔が近い。
 黒髪、緑眼でモデルのような顔立ちだ。
 
 さっきこの人と肩を組んでいた人は眼鏡のイケメン。
 茶髪、茶眼の優等生タイプ。

 みんな同じ服を着ているから仲間なんだよね?
 アニメや漫画の騎士っぽい服だけれど。
 
 イケメンが歩くと、心地よいリズムで揺れる身体。
 どうしよう。なんだか眠たくなってきた。
 温かくていい匂いがする腕の中で頭から背中にかけて優しく撫でられている結実をだんだん睡魔が襲う。
 
 眠っている場合じゃないけれど、もう限界……。
 結実はあっという間に眠りに落ちた。