辺境伯はお犬様(聖女)を溺愛中!

「……は?」
 光の中には小さな生き物。
 大きくてまんまるな目にふさふさな毛をした小さな犬。
 
「……犬?」
「ルーク、瘴気が……」
 犬を中心に、瘴気の霧がいっきに晴れていく。
 
 犬は瘴気を避けるもの。
 犬の周りだけ瘴気がなくなり、犬を連れて歩いていれば瘴気が近づかないと言われている。
 だが、この犬はまるで瘴気を祓っているかのように、どんどん瘴気が消えていく。
 
 目の前で起きた意味が分からない現象に、ルークとチャーリーは顔を見合わせるしかなかった。

「キャン!」
 ねぇ、ちょっと女神様。
 確かに私は犬が好きです。
 子どもの頃から大好きです。

「キャウ!」
 だからって、自分が犬になりたかったわけじゃありません!

 このふさふさの小さな足、小型犬ですよね?
 靴下を履いたみたいな先だけ白い足は可愛いですけど!
 
「キャウ、キャウ!」
 それにここはどこですか?
 森にいきなり落とすってどういうことですか?
 なんでイケメン同士が肩を組んでいるんですか?
 なんであの後ろの人たちは倒れているんですか?

「キャウ!」
 ねぇ、絶対ヤバいところに落としましたよね?
 これは一体どういうこと~!?
 
 短い足を地面に叩きつけながら吠える小さな犬。
 
「あれは怒っているのか?」
「……きっと怒ってるね」
 ルークが犬を指差すと幼馴染のチャーリーは、犬を見ながら苦笑した。