犬は女神の遣い。
犬は瘴気を避けてくれる貴重な存在だ。
だがこの国にいた最後の犬は5年前に高齢で亡くなってしまった。
他の犬たちはすべて隣国のレイド国に奪われ、現在この国に犬は1頭もいない。
「隊長、帰り道がわかりません!」
「目印は?」
「それが、目印が見つからなくて」
思ったよりも濃い瘴気の霧のせいで道を間違えたのか。
このままでは全員の命が危ない状況にルークの背中に冷や汗が流れる。
ルークは予備の中和剤を地面へ投げつけると、周りの木に目印がないか自分の目で見て回った。
ロータス国と隣国レイド国の間には『瘴気の森』と呼ばれる大きな森がある。
この森を含む辺境を任されているのがルークだ。
本来なら辺境伯は父が務めるべきだが、長年瘴気に晒された生活をしていたせいで、今では起き上がることさえできなくなってしまった。
父が存命にも関わらず、わずか20歳のルークが辺境伯となったのは極めて異例のこと。
それだけ瘴気は国にとっても厄介なモノだった。
「こっちだ。ここに目印が……」
振り返ったルークは目を見開いた。
「ルークだけでも逃げろ」
「隊長、俺たちは足手纏いになる。ここに置いて行ってくれ」
「何を弱音を! 全員で戻るぞ、絶対に!」
瘴気測定器は黄色。
倒れた隊員たちも今ならまだ助かる。
ルークは今にも意識を失いそうな幼馴染のチャーリーの腕を肩に回す。
まだ歩ける隊員たちは意識のない仲間を引き摺りながら進んだ。
「うっ、」
「大丈夫か」
歩けていたはずの隊員たちも瘴気で意識が遠くなる。
どうすればいい?
彼らを置いて自分だけ逃げるなんてしたくない。
だがこのままでは全滅だ。
……女神よ。
この世界を守る女神ライラプスよ。
どうか、我らに加護を。
どうか、彼らを助けてください。
神なんて信じていない。
こんな時だけ、縋るなんてどうかしている。
それでも祈らずにはいられない。
「……犬さえいれば」
犬さえいれば彼らは助かるのに。
自分の判断が一歩遅れたせいで。
眉間にシワを寄せながら、悲痛な声でつぶやくルーク。
幼馴染のチャーリーは「ルークのせいじゃない」と小さな声で答えた。
「……なんだ?」
「この光は?」
まるで天から迎えが来たかのような光に調査隊は目を細める。
光の中には金髪の女。
透けた姿は幻想的で、女神ではないかと錯覚する。
光はそのまま小さな丸になり、地面へとたどり着いた。
犬は瘴気を避けてくれる貴重な存在だ。
だがこの国にいた最後の犬は5年前に高齢で亡くなってしまった。
他の犬たちはすべて隣国のレイド国に奪われ、現在この国に犬は1頭もいない。
「隊長、帰り道がわかりません!」
「目印は?」
「それが、目印が見つからなくて」
思ったよりも濃い瘴気の霧のせいで道を間違えたのか。
このままでは全員の命が危ない状況にルークの背中に冷や汗が流れる。
ルークは予備の中和剤を地面へ投げつけると、周りの木に目印がないか自分の目で見て回った。
ロータス国と隣国レイド国の間には『瘴気の森』と呼ばれる大きな森がある。
この森を含む辺境を任されているのがルークだ。
本来なら辺境伯は父が務めるべきだが、長年瘴気に晒された生活をしていたせいで、今では起き上がることさえできなくなってしまった。
父が存命にも関わらず、わずか20歳のルークが辺境伯となったのは極めて異例のこと。
それだけ瘴気は国にとっても厄介なモノだった。
「こっちだ。ここに目印が……」
振り返ったルークは目を見開いた。
「ルークだけでも逃げろ」
「隊長、俺たちは足手纏いになる。ここに置いて行ってくれ」
「何を弱音を! 全員で戻るぞ、絶対に!」
瘴気測定器は黄色。
倒れた隊員たちも今ならまだ助かる。
ルークは今にも意識を失いそうな幼馴染のチャーリーの腕を肩に回す。
まだ歩ける隊員たちは意識のない仲間を引き摺りながら進んだ。
「うっ、」
「大丈夫か」
歩けていたはずの隊員たちも瘴気で意識が遠くなる。
どうすればいい?
彼らを置いて自分だけ逃げるなんてしたくない。
だがこのままでは全滅だ。
……女神よ。
この世界を守る女神ライラプスよ。
どうか、我らに加護を。
どうか、彼らを助けてください。
神なんて信じていない。
こんな時だけ、縋るなんてどうかしている。
それでも祈らずにはいられない。
「……犬さえいれば」
犬さえいれば彼らは助かるのに。
自分の判断が一歩遅れたせいで。
眉間にシワを寄せながら、悲痛な声でつぶやくルーク。
幼馴染のチャーリーは「ルークのせいじゃない」と小さな声で答えた。
「……なんだ?」
「この光は?」
まるで天から迎えが来たかのような光に調査隊は目を細める。
光の中には金髪の女。
透けた姿は幻想的で、女神ではないかと錯覚する。
光はそのまま小さな丸になり、地面へとたどり着いた。


