起点と終焉の駅 ―生きるか死ぬか、あなたはどちらの駅を選びますか?―

 
 古い電車の座席に深く身を沈める度、背中には不規則な振動が伝わってきた。それはまるで、不安と期待がせめぎ合う心のように、体を揺さぶる。
 窓の外を眺める風景は少し霞んでいるが、その先に待っている可能性を思うと、知らず知らずのうちに、口元に微かな笑みが浮かんでいた。


 私が選んだのは、赤い電車だった。


(神崎さんは、私が赤い電車を選んだ理由を聞かないのかな?)
 座席に座ることなく、すぐ隣で背筋を伸ばして立っている神崎さんを盗み見る。それはまるで、私を護衛するかのように見えた。
 そんな私に気付いたのか、神崎さんが笑みを浮かべた。


「なぜ赤い電車を選んだのかを、聞いてほしいっていう顔をしていますね?」
「え、え!? 本当ですか!?」
「本当です。因みにですが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……はい」
「では、お願いします」


 神崎さんが優しく微笑み、私の方に体を向けてくれる。それは、まるで「あなたの話を聞きたいです」と言ってくれているようで、嬉しくなってしまう。
 私は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。


「私は二万人に一人という難病を持って生まれました。見てください。この髪と肌。それに瞳の色を……。このアルビノのせいで、私はずっと辛い目に遭ってきたんです」
「そうなのですね……。私には、とても美しく見えますが、さぞやお辛い思いをされたことでしょう」


 神崎さんのその言葉に、一瞬言葉が詰まってしまう。彼にそう言われると、素直に誉められているように感じるから不思議だ。
 なんだか嬉しくなってしまった。


「私、赤い(この)電車に乗って、人生をやり直してみたいと思ったんです。もう一度、自分にチャンスをあげたいって。私、幸せになりたいから……」
「そうですか。それは素晴らしい考えですね」
「はい。ありがとうございます」
 こんな風に素直に誉めてもらえると、嬉しいけれど、恥ずかしくなってしまう。


「変わるといいですね、未来」
「……はい」


 私は静かに頷く。
 無意識にスカートを握る指には力が入っていた。
けれど、その力は揺れに耐えるというよりも、これから始まる冒険への、確かな一歩を踏み出すための決意のように感じられた。


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 では、素敵な旅を……。


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