「お嬢様、これで全ての駅を通過いたしました。全ての駅を見られて、どうでしたか?」
「はい。色々なことを思い出しました。家族と過ごした楽しかった日々。それは、今でも私にとっての宝物です」
「そうですか」
「でも……」
「でも?」
私が唇を噛み締めて俯くと、神崎さんが心配そうに私の肩にそっと手を添えてくれる。
その手の温もりを感じ、私はまた言葉を紡ぎ出す。
「でも、アルビノに生まれたせいで、辛い思いもたくさんしてきました。イジメを受けたり、仲間外れにされたり。私がこの姿でいる限り、一生こんなことが続くんだろうなって。過去と今を見ていたら辛くて、苦しくなりました」
「それは、辛い思いをしてしまいましたね」
「はい。でも、幸せな時間も、確かにありました……」
「そうですか……」
楽しかった思い出と、辛かった思い出が大波のように襲ってきて、心がひっくり返るような痛みが走る。
私はスカートをギュッと握り締めた。
そして、ずっと我慢していた涙が、堰を切ったように溢れ出してしまう。ボロボロと溢れ出す涙は、制服の黒いスカートに音もなく吸い込まれていく。
私は泣いた。肩を震わせ、声を出して。それはまるで子どものように……。
辛く苦しい日々だった。
でも、確かに幸せな時間もあった――。
こんな私を、愛してくれた人もいるし、守ってくれた人もいた。
この電車の旅を通して、色々な発見をすることができた。私には、見えていない部分がたくさんあった。でも、それを見つけることができたんだ。
生きるか、自ら命を断つか――。
この二つの選択肢が今、目の前にある。
(私は、どちらの駅に向かったらいいんだろう……)

しかし、どちらにも足が踏み出せない。
心は真っ白になり、答えが見つけられない。
心は重く、どちらにも行けないまま、立ち止まってしまった。
「では、お嬢様、そろそろ決断を……」
「……はい」
ここに来るまで、本当に辛いこと、苦しいことの連続だった。
でも私が忘れていただけで、幸せなこともあった。
私は、大勢の人たちから嫌われてきたけど、愛してくれた人もいた――。
今回の電車の旅で、それを知ることができた。
私の心は決まった。もう迷わない。
私は意を決して顔を上げた。
「神崎さん、私、あの駅に行きます」
「かしこまりました。では最後に確認をしますね」
1.どちらの電車にも乗らない。
「承知致しました。このまま本を閉じて、気を付けてお帰りくださいませ」
2.『起点の駅行き』へ向かう。
「承知致しました。では、19ページへ飛んでください」
3.『終焉の駅行き』へ向かう。
「承知致しました。では21ページへ飛んでください」
「覚悟が決まったんですね」
「はい」
私が電車の座席に座ると「では発車致します」という神崎さんの静かな声が聞こえてくる。
その瞬間、外の景色が見えなくなる。まるで、時空の歪みに落ちてしまったかのようだ。
「もう迷わない」
電車が再びゆっくりと動き出す。
次の駅は終着駅だ。
これで私の人生が変わる……。そう思うと、心が締め付けられるように痛む。
でも、不思議と晴れ晴れとした気持ちだった。
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