起点と終焉の駅 ―生きるか死ぬか、あなたはどちらの駅を選びますか?―


「お嬢様、到着しました」
「え? ここが『起点の駅』、ですか?」
「はい。お嬢様がこの電車を降りた瞬間、過去が大きく変わります」
「本当に過去が変えられますか?」
「はい。よく頑張りましたね」


 神崎さんの笑顔に、止まっていた涙が再び頬を伝う。


(これで、私は生まれ変わるんだ)
 そう、心に誓う。


「さぁ、お嬢様。電車をお降りください」
「あの、神崎さんは、また違う誰かのところに向かうんですか?」
「はい。その通りでございます。では、お降りくださいませ」
 神崎さんがそっと背中を押してくれる。


「では、お嬢様、素敵な旅を……」
「あ、神崎さん! ありがとうございました!」
 お礼を言おうと思い振り返ると、もうそこには神崎さんの姿も、電車もなかった。
 きっと、もう別の人の所に行ってしまったのだろう。


 あの人に会えたことで、あの電車に乗れたことで、私の人生は大きく変わった。


 これからは、前を見て生きていこう。
 イジメや仲間外れに屈することなく、強く、逞しく生きていくんだ。
 だって、私には、私のことを愛してくれる人が、たくさんいることに気付けたから。


「ありがとう、神崎さん」
 小さく呟いたとき、一瞬目の前の景色が歪み、見ている風景が変わった。


 『起点の駅』は、私が生まれた病院だった。


 そして今、赤ん坊の私は、人工呼吸器をつけながらも、必死に生きようと呼吸をしている。
 そんな私を、両親が愛おしい表情で見つめてくれていた。


「お父さん、お母さん、私頑張るからね」


 赤ん坊の私は話すことはできないけれど、差し出された父親の指を、力を込めて握り返す。
 温かい母親の腕の中。
 私はそこで深く呼吸をする。


(幸せだなぁ……)


 心の底からそう思える。


(お父さん、お母さん、大好き……)


「本当に可愛いね。僕たちの元に、二万人に一人の天使が来てくれたなんて、なんて幸運なんだろう」
「本当よね。天使みたいに金色の髪も、透き通った肌も、青い瞳も、本当に可愛い」
 私の誕生を心から喜んでくれる両親の声が聞こえる。


 その世界が温かくて、優しくて。幸せで……。私はつい眠くなってしまう。


「ゆっくり休んでね。私たちの大切な赤ちゃん」


 母親の優しい声が、まるで子守唄のようで。私はそっと瞳を閉じる。
 多幸感に包まれながら、私は夢の世界へと旅立ったのだった。


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