2025年8月19日。
とある画像が、SNSに投稿された。

手にした十枚には謎がある。
指示に従って解いてみろ。
挑戦的な文面の横には、小説の一ページと思しき文字列が並んでいる。
そんな不可思議な画像を筆頭に、さらに九枚、計十枚の画像が投稿されていた。
画像の投稿主は、鳴海冬海。
弱冠15歳で某ミステリー新人賞の大賞を受賞してデビューし、その後も次々と新作を発表しては世のミステリー好きを魅了してきた、期待の大学生ミステリー作家だ。
と同時に、彼は僕の親友だった。
成見修真。
端正な顔立ちと長身でモデルのような見た目、あらゆるジャンルに精通した頭脳に、抜群の運動神経を誇るモテ男。それでいて性格も良く、細かい気配りにも隙が無い完璧超人。
まさに、自慢の親友と呼ぶに相応しい人物だった。
そんな彼が作家用のアカウントから放った十枚の画像は、とある情報週刊誌のWEBメディアに同日正午に掲載された記事と相まって、ミステリー界隈のみならずゴシップ好きな一部の世間を大いに賑わせた。
『第一発見者は有名ミステリー作家N! 殺人事件の重要参考人として取り調べを受けた後に失踪!?』
実名、作家名ともに記載はされていなかったが、某ミステリー大賞を若くに受賞して一躍有名になったこと、近く作品の映画化も予定されていること、スマホやIoTなどのデジタル媒体の特性を活かした斬新なトリックが高く評価されていることなど、分かる人が読めば「鳴海冬海」だと確信できるに足る内容だった。
結果、皮肉にも彼が得意としているデジタル技術の一端であるSNSによって、彼にかけられた嫌疑は止まるところを知らぬ勢いで広がっていった。
[つまり何? 鳴海冬海がリアルでもヤッちゃったってこと?]
[事実と小説の境目もわかんない狂人だったか~つか失踪って確定でしょ]
[あたしは信じたくないけど、あの謎解きみたいな画像はなんなの?]
[十枚の画像さ、挑戦状っぽい。読者か、特定の人に向けた謎解き]
[あの謎を解いたら事件の真相がわかるとか? それか鳴海の居場所とか]
[なんにせよ、解くしかねえな。俺たちが最初に謎を暴いてやる]
誹謗中傷を投げつける者、面白がる者、画像の意図を探る者など、世間の反応は様々だった。
ただひとつ、殺人の容疑をかけられた稀代の若手ミステリー作家が、失踪と同時に投稿した十枚の謎がかかれた画像への興味だけは、誰も彼もに一貫してあった。
そしてそれは、僕も例外ではない。
謎解き画像が投稿されてから一時間。高鳴っていた僕の心臓はようやく落ち着きを取り戻し、べっとりとかいていた汗も徐々にひき始めていた。
「修真……お前は、どうして……」
入れ替わるようにして、僕の心には困惑や疑念、葛藤、悔恨など、友への複雑に絡み合った想いが湧き上がってくる。
――航大。俺たちは、ずっと親友だからな。
彼の本心が見えなかった。
僕は、居ても立ってもいられなくなった。
一度閉じたスマホの画面を再び開き、SNSに投稿された謎解き画像を全てダウンロードする。
格子状に配置された不規則な白黒のマスたちが、僕を見つめ返していた。
とある画像が、SNSに投稿された。

手にした十枚には謎がある。
指示に従って解いてみろ。
挑戦的な文面の横には、小説の一ページと思しき文字列が並んでいる。
そんな不可思議な画像を筆頭に、さらに九枚、計十枚の画像が投稿されていた。
画像の投稿主は、鳴海冬海。
弱冠15歳で某ミステリー新人賞の大賞を受賞してデビューし、その後も次々と新作を発表しては世のミステリー好きを魅了してきた、期待の大学生ミステリー作家だ。
と同時に、彼は僕の親友だった。
成見修真。
端正な顔立ちと長身でモデルのような見た目、あらゆるジャンルに精通した頭脳に、抜群の運動神経を誇るモテ男。それでいて性格も良く、細かい気配りにも隙が無い完璧超人。
まさに、自慢の親友と呼ぶに相応しい人物だった。
そんな彼が作家用のアカウントから放った十枚の画像は、とある情報週刊誌のWEBメディアに同日正午に掲載された記事と相まって、ミステリー界隈のみならずゴシップ好きな一部の世間を大いに賑わせた。
『第一発見者は有名ミステリー作家N! 殺人事件の重要参考人として取り調べを受けた後に失踪!?』
実名、作家名ともに記載はされていなかったが、某ミステリー大賞を若くに受賞して一躍有名になったこと、近く作品の映画化も予定されていること、スマホやIoTなどのデジタル媒体の特性を活かした斬新なトリックが高く評価されていることなど、分かる人が読めば「鳴海冬海」だと確信できるに足る内容だった。
結果、皮肉にも彼が得意としているデジタル技術の一端であるSNSによって、彼にかけられた嫌疑は止まるところを知らぬ勢いで広がっていった。
[つまり何? 鳴海冬海がリアルでもヤッちゃったってこと?]
[事実と小説の境目もわかんない狂人だったか~つか失踪って確定でしょ]
[あたしは信じたくないけど、あの謎解きみたいな画像はなんなの?]
[十枚の画像さ、挑戦状っぽい。読者か、特定の人に向けた謎解き]
[あの謎を解いたら事件の真相がわかるとか? それか鳴海の居場所とか]
[なんにせよ、解くしかねえな。俺たちが最初に謎を暴いてやる]
誹謗中傷を投げつける者、面白がる者、画像の意図を探る者など、世間の反応は様々だった。
ただひとつ、殺人の容疑をかけられた稀代の若手ミステリー作家が、失踪と同時に投稿した十枚の謎がかかれた画像への興味だけは、誰も彼もに一貫してあった。
そしてそれは、僕も例外ではない。
謎解き画像が投稿されてから一時間。高鳴っていた僕の心臓はようやく落ち着きを取り戻し、べっとりとかいていた汗も徐々にひき始めていた。
「修真……お前は、どうして……」
入れ替わるようにして、僕の心には困惑や疑念、葛藤、悔恨など、友への複雑に絡み合った想いが湧き上がってくる。
――航大。俺たちは、ずっと親友だからな。
彼の本心が見えなかった。
僕は、居ても立ってもいられなくなった。
一度閉じたスマホの画面を再び開き、SNSに投稿された謎解き画像を全てダウンロードする。
格子状に配置された不規則な白黒のマスたちが、僕を見つめ返していた。



