「視界の隅でガクガク揺れられてる方が迷惑なんだよ! 必要ないならいい!」
ふんと勢いよくそっぽを向いた恵衣くん。耳まで赤い。
何故か私まで無性に恥ずかしくなってきて、でもその優しさが嬉しくて、恐る恐るその肩に頭を預けて蚊の鳴くような声で「ありがとう」と礼を伝えた。
恥ずかしさであっという間に目が冴えてしまい、寝たフリなんて器用なことができる訳もなく、沈黙が気まずくて必死に話題を探す。
「そ、そういえば帆負命の家で"ある人に頼んだ"って言ってだけど、あれって誰のことだったの?」
「ん? ああ……」
恵衣くんはまたチラリと慶賀くんに視線を送る。そして眠っていることを確認したあと声を低くして答えた。
「泰紀だよ。あの馬鹿に本庁の資料室で禄輪禰宜が書いた空亡戦の報告書を探し出すよう頼んだ」
「泰紀くんに……!」
数週間前に神修で道をわかつことになった泰紀くんの顔を思い出す。
なるほど、空亡戦の最終局面で一番志ようさんに近い場所にいた禄輪さんなら、何か知っているかもしれないし報告書にも書いているかもしれないというわけか。
「でも本庁の資料室だなんて、簡単に入れる場所じゃないよね? それこそ護りの結界とか張ってありそうだけど」
「俺の通行許可札を渡してある。あとは自分で何とかするだろう」
シレッと答えた恵衣くんに絶句する。
「……恵衣くん、だいぶチーム罰則に感化されちゃったね」
「本当にな」
自覚あったんだ。



