言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


私は机の中を探そう。

腐った畳を避けながら机に歩み寄ったその時。


「────あった」


誰よりも真っ先に声を上げたのは来光くんだった。

ハッと振り返った私たち。来光くんは窓の前に敷かれた布団の前に膝を着いていた。


「彼が、守ってくれていたみたいだよ」


そう振り返った来光くんの目には大粒の涙が滲んでいて、私たちは戸惑いながら歩み寄る。

来光くんの背中の影から覗き込む。布団の上の光景に息が止まった。

骨だ。人の骨だった。肉が削げ落ちた骸骨が布団に横たわっていた。

薄汚れて灰色になった白衣、虫に食われて穴が空いた紫袴。胸の前に握られているのは真っ白な穂首(ほくび)に金の装飾が施された(あか)筆管(ひっかん)の一本の筆だ。

考えたこともなかった。鳥居を閉じた社の中がどうなっていたのか。

空亡が現れ社ごと封印しようと社を閉じ、けれど空亡には逃げられた。

その後もこの中にいた神職さま達は生きていたんだ。水もなく食料も限られている。自分の命がいつ尽きるのかが目に見えている状況で、命が尽きるその瞬間まで、ここにいた神職さま達はこの筆を守り続けた。

彼は、きっとふくらの社の宮司だ。

自然と布団の前に膝をおった。白骨化したご遺体に手を合わせる。


「かけまくも(かしこ)き (あま)つ神(くに)つ神 八百万の神達の大前に 謹みて申さく 今ここに ()の者の御霊(みたま) 隠れましぬる(よし)を 畏み畏みも申す────」


皆が隣に膝を着いた。そして私の声に続けて、同じ祝詞を奏上する。