靴のまま玄関を上がると足裏がぐわりと沈んで「ヒッ」と息を飲んだ。咄嗟に前を歩いていた慶賀くんが手首を掴んでくれて、何とか体勢を立て直す。
「あ、ありがとう」
「気を付けろよ! 床が腐ってるみたいだから、体重かけすぎると抜けちまうからな」
わかった、と顔を引き攣らせながら頷き慎重に足を出した。
こっち、と嘉正くんが先陣を切って廊下を進んでいく。どうやら一階ではないらしく階段を使って二階へ上がって行った。
今にも抜け落ちそうなほどしなる階段を息を潜めながら登り切る。
二階からは神職たちの私室らしい。開け放たれた襖の奥には誇りを被った誰かの部屋があった。
「たぶん一番奥だ」
失せ物探しの音が近いのか顔を歪めながら嘉正くんが廊下の奥を指さした。
軋む廊下を進む。突き当たりの壁の小窓から月明かりが差し込み、埃が揺れるのを映しだした。
「開けるよ」
振り返った嘉正くんに私たちは息を飲み深く頷く。
締め切られた襖を静かに開いたその時、形容しがたい異臭が奥からふわりと流れ込んできて思わず「うっ」と鼻を抑えた。古びた脂と腐った肉が混じったような臭いだ。
顔を顰めながら中へはいる。箪笥と机くらいしかものがない質素な部屋だった。窓側にはひと組の布団が敷きっぱなしになっている。
「全員で手分けして探すぞ。おい来光、一旦窓開けてくれ」
了解と応えた私たちは散り散りになって部屋の捜索を開始した。



