宝物殿の重い扉は5分と経たずして中から開いた。険しい顔をした嘉正くんたちが飛び出してきて、「何事だ?」と恵衣くんが眉根を寄せる。
答えるよりも先に来光くんが「シッ」と唇に人差し指を当てた。その隣で嘉正くんが両耳に手を当てて静かに目を閉じている。
中で何かが起きたんだ。
すぐさまグループLINEで慶賀くんへ「集合!」とメッセージを送る。
嘉正くんが「こっちだ」と呟き走り出したのは、宝物殿でも本殿でもなく、社務所がある方角だった。
「何があった!? 宝物殿になかったのか!?」
合流した慶賀くんが額に汗を浮かべながら早口で尋ねる。
「宝物殿にはね。筆が保存されていたケースの蓋が空いてたんだよ。だから慌てて失せ物探しを奏上したら、別の場所から音が聞こえて」
走りながら来光くんが答えた。
別の場所から? つまり誰かが宝物殿から神器を持ち出したということ?
「払日揮毫筆はこの社の中にあるんだな?」
「ああ。たぶん────あそこに」
先頭を走っていた嘉正くんの足が建物の前で止まった。
朽ちかけた建物を見上げる。扉の横には「社務所」と書かれた看板がかけられていた。
「間違いない、この中から聞こえる」
「社務所から? なんでこんなところから……」
「とにかく行くぞ」
土埃で開けづらくなった扉を3人係でこじ開ける。
中は薄暗く、住む人がいなくなった家特有の乾いた埃とカビの匂いで充満していた。



