言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


どの建物も激しく腐食が進む中、宝物殿の建物だけはおそらく昔の姿から寸分たがわない状態でそこに建っていた。

真っ白な土壁に朱色の柱には厳かな金の細工が施されており、黒屋根は美しく弓なりにしなってずしりと構えている。


「嘉正、来光。行け!」


恵衣くんの号令で二人が隊列を飛び出した。私たちの中でとりわけ失せ物探しの呪歌が得意な二人だ。

残った私たち三人も二手にわかれる。正面の入口は私と恵衣くんで、裏口は慶賀くんが守る。何が起きるのか分からない現状、全員で中へ入るのは危険だと判断したからだ。

みんなが配置に着いた。

緊張した面持ちの嘉正くんと来光くんが「行ってくる」と私たちに告げる。「頼んだ」と二人の目を見て深く頷いた恵衣くん。

黒塗りの扉は長年閉ざされていたせいか鈍い金属音と共にゆっくりと開いた。懐中電灯を照らした二人が中へ入り、バタンと重い音を立てて閉まる。


両手を顔の前で握った。

どうか、払日揮毫筆(ふつじつきごうひつ)が見つかりますように。


「大丈夫だ、必ず神器は見つかる。二時間後には風呂に入って寝てる」


まっすぐ前を見つめる恵衣くんがそう零した。

「そうだね」と小さく笑って隣に並ぶ。空はすっかり日が沈み月が登っていた。