鬼門をくぐり抜けた瞬間、押し入れの奥の粉っぽくて喉に引っかかるような湿気た埃の強烈な匂いがぶわりと肺を埋めつくした。
みんなは一斉に顔を顰め袖で鼻を隠すも、声は出さずただひたすら進む。
ここからは時間との戦いだ。ふくらの社が現世に戻ってきたことはまだ私たちしか知らないけれど、直にその話は方々へ伝わるだろう。ともなれば三種の神器を探している芽さんの耳にも届く。
私たちはそうなる前にいち早く払日揮毫筆を見つけ出し、隠れ家へ戻らなければならない。
立ち止まる暇はない。
社頭は伸び切った草木が枯れ果てて、まるで乾いた藁の上を歩いているようだった。少し歩けばすぐに本殿の後が見えた。かつては色が塗られていたであろう柱は、木目の荒さだけがむき出しになっている。屋根の一部は落ち、欠けた瓦の隙間から枯れ葉と土が入り込み、内部に静かな堆積をつくっていた。
私たちはそのまま本殿の前まで回り込んだ。
拝殿へ続く階段は抜け落ちて、正面の鈴緒は途中でちぎれ、縄の繊維が獣の毛のように乱れて垂れ下がっている。
胸が詰まる思いだった。
絶望的な状況で鳥居を閉じて、朽ちゆくのをただ静かに待つしかなかった。なんて寂しいことなんだろう。
手を合わせる時間はないけれど、皆静かに目を瞑って小さく頭を下げる。私たちを守ろうとしたこのお社に敬意を示したかった。
「宝物殿だ。皆、気を引き締めて」
宝物殿は神楽殿の裏にあった。ふくらの社の宝物殿はわくたかむの社と同じで、誰でも中の宝物を鑑賞できるように常時解放している。



