「そういえば、帆負命ってずっとおひとりであちこち渡り歩いて暮らしていらっしゃるんですか」
来光くんがそう尋ねると、土鋤の手入れをしていた帆負命が「ん?」と険しい顔で振り返った。
険しい顔がデフォルトなのはこの十日間共に過ごしたおかげで分かっている。恵衣くんと一緒だ。
「ああ、そうだな。さすがに子供の頃は両親に頼っていたが、成人した後からはずっとひとりだ」
神様ではあるけれど身体は人間だ。
ご両親がいてもおかしくないのだけれど、帆負命から「両親」という言葉を聞くとなんだか面白い。ご両親も自分が神を産んだと知ったら驚くだろうな。
「いいなぁ、一人暮らし。寮生活も楽しいけど、ちょっと憧れるよな」
慶賀くんがそう零すと、帆負命は少し目を細めてぼんやりと遠くを眺めた。そしてふっと小さく笑って順番に私たちの顔を見つめた。
「ひとりは、寂しいぞ。隣にいてくれる仲間は、大切にしなさい」
帆負命がじっと私のことを見つめているのに気付いた。
「一人になろうとするな。どんな強敵が現れようと、お前たちは仲間がいる。仲間がいれば繋ぐことができる。託すことができる。逃げることもできる。友の存在がいる限りお前たちは強い、お前たちは負けない」



