言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


それが今はどうだ。私は追われる身になってしまい何処へ行くにも顔を隠し、明日は神様と鬼脈で鳥居作り。

今の自分ですら、目の前で何が起きているのか信じられない。

毎晩眠る前に、明日目が覚めたら神修の自分の布団だったらいいのにと願ってしまう。全部が全部悪い夢で、薫先生が芽さんのことで苦しむこともなく、聖仁さんはいつも通り瑞祥さんと並んで歩いていて、私もいつもと変わらない神修での一日が始まる。

絶対に有り得ないと分かっているのに、そう願わずにはいられなかった。


「悪い夢だったら、いいのにね」


堪らずポツリと呟けば、嘉正くんはどこか困ったように曖昧に笑った。

慌てて「今のなし」と続けようとしたところで、ずっと黙って座っていた恵衣くんがお尻についた砂を払いながら立ち上がった。


「悪い夢を、俺たちが終わらせるんだろ」


揺らがない瞳が夕陽で赤く燃えている。どこまでも力強く、真っ直ぐと前だけを見つめている。

「よっ!」と声を上げて立ち上がった嘉正くんは大きく伸びをした。同じようにずっと先を見つめて微笑む。


「恵衣の言う通りだ。俺たちは、終わらせるためにここまで来たんだ」


かなり遠いところまで走っていってしまった二人に「おーい」と手を振った嘉正くん。じゃれるように砂浜を飛び回る二人の耳には届かず、「呼んでくる」と駆け出した。