「うっ────ひょーい!」
楽しげな掛け声と大きく水飛沫が上がる。夕日で赤く染った雫が宙を待った。
「おっ、意外に冷たくねぇかも! お前らも来いよ!」
「やだよ、風邪ひいたらどうすんのさ」
「なんだよ面白くねぇな……っと!」
両手ですくい上げた海水を勢いよく来光くんに放つ。見事にばしゃりと頭から被った来光くんは濡れた眼鏡をすっと外すと「ゴラァァ慶賀ァ!」と裾をたくし上げて海へ飛び込んで行った。
いつの間にか笑い声に変わって、楽しそうに押し合う二人を眺める。
「まさか沖縄まで来てたなんてね」
沈みゆく夕日を眺めながらそう呟くと、嘉正くんが「だね」と目を細めて笑った。
ざぶんと波が浜に打ち寄せる音に耳を済ませた。夕日で温まった風は磯の香りを含んでいて、本当に南の方まで来たことを実感する。
「ビックリだよね。鬼脈でショートカットしたとはいえ、沖縄の社まで来ちゃったんだね俺たち」
昨日、帆負命の案内で鬼脈から脱出することに成功した私たち。その鬼門は沖縄県に繋がっていた。
手置帆負命の社といえば千葉や岡山にある神社が有名だ。けれど昔から現人神として現世に顕現なさることが多く、そして日本各地を回って鳥居の建立にご尽力くださることから、あちこちにあの山小屋のような小さな社が建てられて帆負命が休めるようになっているらしい。



