「大変恐縮なんですが、現人神さまの御尊名をお伺いしてもよろしいでしょうか……? 助けていただいた神さまの名前も知らないなんて、ホントお恥ずかしいんですが」
ずっと気になっていた事なので心の中でグッジョブ来光くんと親指を立てる。
鬼脈でこのおじいさんが現人神さまだと分かった時から、何の神様でどうしてあの場で木槌を振り下ろしていたのかずっと気になっていた。
ああ、と軽く頷いた現人神さまはちらりと自分の腰に挿した木槌を見下ろして私たちを見る。
「手置帆負命、人の名は置田帆二郎だ。好きに呼べばいい」
「じゃあ帆じぃで────」
目にも止まらぬ勢いで恵衣くんの手が伸び慶賀くんの頬を捉えた。タコ口になった慶賀くんがうんうんと唸り声をあげる。おおかた「何すんだよー!」だろう。
さすがに神さま相手に"帆じぃ"は恐れ多すぎる。恵衣くん、よくぞその口を塞いでくれた。
それにしても手置帆負命という神さまの名前は授業でも聞いたことがない。日本には八百万の神さまが存在するので知らない神さまがいてもおかしくはないのだけれど、恩人……恩神なので申し訳ない気持ちになる。
ピンと来たのはやはり秀才組二人だった。
「手置帆負命……木工と工匠の神ですね」
嘉正くんの言葉に現人神さまはひとつ頷く。
木工と工匠、つまり建築の神さまと言ったところだろうか。なるほど、だから木槌を持っていたのか。
でも建築の神さまが、どうして鬼脈なんかで木槌を振っていたのだろう?
その疑問はすぐに解消された。
「────手置帆負命は建築の神で、全ての鬼門に鳥居を建ててくださるお方だ」



