慌てて声がする方へ駆けつければ本殿の入口が空いていた。戸板一枚の質素な作りだ。本殿自体も荘厳さはないし、どちらかと言えば山小屋のような佇まいだ。
建物の中を覗き込む。中は本殿というよりも、江戸時代の民家のようになっていた。地面から一段高くなった板張りの床の室内には真ん中には囲炉裏があって、家具は箪笥や机くらいしかない。
草履を脱いで足を洗っていた現人神さまはのしのしと中に上がると、囲炉裏の前に腰を下ろした。
「これ、入ってこいってこと?」
首を傾げた慶賀くんの頭が間髪入れず恵衣くんによって叩かれる。
「バカッ、現世とはいえ神の領域なんだぞここは……!」
「ハッ! 確かに!」
ぽんと手を打った慶賀くんに、額を抑えた恵衣は深く息を吐く。
私たちのそんなやり取りを見ていた現人神さまが、ふっと小さく笑って眉間のシワを解く。
「構わん、入れ」
「マジっすか! あざーっす! お邪魔しまーす! もう足が限界だったんだよ〜」
元気よくお礼を言った慶賀くんがそそくさと雪駄を脱いで上がり込む。その図太さに私達は言葉を失った。
神の領域に入るのに、あざーっすって……。
「お前らも早く来いよ〜、お茶入れてくれるって!」
何か言いたげに口をパクパクさせた恵衣くん。しかし神様の前で怒鳴る訳にもいかず長い溜息を吐いて飲み込んだ。



