「ば、馬鹿ッ! お前たち今すぐ離れろ!」
青白い顔をした恵衣くんがおじいさんから二人を引き離すと、その後頭部をガッと掴んで勢いよく下げさせる。
いてぇ!何すんだよ!と二人が噛み付くも、恵衣くんに鬼のような顔で睨まれてヒッと口を閉ざす。
「申し訳ありません! この馬鹿どもは悪気があった訳ではなく、ただ貴方様が誰なのかを理解していなかったのです!」
勢いよく謝った恵衣くんに私達は何が何だか分からずお互いに目配せをした。
どういうこと? このおじいさんはとても偉い人ってことなの?
「お前らも頭を下げろ……! 本来なら直視していいお方じゃないんだぞ!」
直視していいお方じゃない?
嘉正くんと来光くんはその言葉にピンと来たのか、恵衣くんと同じように顔を真っ青にして地面にめり込む勢いで深々と頭を下げた。
とりあえず私も同じように頭を下げる。
「なんなんだよ恵衣、説明しろよ! このおっちゃんお前の知り合いか?」
「馬鹿ッ! 馬鹿野郎ッ! この馬鹿が!」
もはや悪口にしかなっていない恵衣くんはあらん限りの力で慶賀くんの後頭部を押さえつけた。
「────このお方は現人神さまだ!」
以前嘉正くんに中等部1年の頃の教科書を借りた時に、教科書の片隅にその説明書きが載っていたのを思い出した。



