「眞奉、皆の先頭に立って! 音の鳴るほうへ進んで!」
「承知しました」
私の傍を走っていた眞奉がばさりと翼をはためかせて宙に浮いた。そのまま先頭を走る嘉正くんの前に出る。
眞奉を追いかけて、とみんなに叫んだ。
何かを叩くような鈍いカンッという音はどんどん大きくクリアになっていく。
一体なんの音? この先に誰かいるのだろうか?
みんなの息遣いが荒くなっていく。
「騰蛇、この先にいるのが人なのか妖なのか分かるか?」
そう問いかけた恵衣くんにちらりと視線を送った眞奉。僅かに目を細めて深い暗闇をじっと見つめる。
「人か妖かと聞かれれば、人です」
この先に人がいるぞぉぉぉッ!と皆が狂喜乱舞する中で、私は眞奉の言い方にやや違和感を覚えていた。
人か妖と言われれば人、まるでもっとその人を正確に形容できる表現があると言いたげな言い回しだ。
何はともあれ、この先に人がいるのは間違いない。だったらこの現状から助けてもらえるはずだ。
「もう間もなくです」
皆の足がいっそう早まる。そして。
「────な、なんだ!?」
声からして男性だった。おそらく年配の方だ。
突如として暗闇の中から現れた眞奉に驚いたのだろう。
「誰だお前らは……!」
眞奉に続いてドタバタと現れた私達に度肝を抜かれたのか、素っ頓狂な声を上げる。
みんなの影から顔を出す。座り込んで目を見開きこちらを見上げていたのは顎髭を蓄えたおじいさんだった。



