「分かったらとっとと進むぞ。俺達には進む以外に選択肢はない」
淡々と告げた恵衣くんが立ち上がる。皆は何も言わなかった。ただ青い顔をして重い腰を上げ、のそのそと歩き始めた。
せっかく眞奉のおかげで皆の沈んでいた空気が少し浮上したのにまた元に戻ってしまった。
唇を噛んで眞奉の翼をじっと見つめる。
本当に方法はないの? どうにかしてここから脱出する方法は。
「……え?」
「どうした巫寿?」
突然声を上げた私に、みんなは怪訝な顔で振り向いた。咄嗟に人差し指を唇に当てて「しっ」と呟く。
目を閉じて耳を済ませる。
耳鳴りがしそうな程の静寂、その中でさっき確かに。
────カンッ……。
「やっぱり……! 何かの音がする!」
え!?と皆が慌てて辺りを見回した。しかし周りは暗闇が広がるだけで何も見えない。
カン、カン、と立て続けに二回ほど音がした。
物を叩くような音だ。金属というよりは木製の何かを叩くような音に近い。
なんの音? 一体どこから聞こえるの?
「俺も聞こえた!」
「僕も! 木槌で何かを叩いてるような音じゃない!?」
「多分こっちだよ!」
すかさず音が鳴る方向を特定した私達は、音に向かって走り出した。



