で、と手を叩いたのは嘉正くんだった。
「ここからどうやって脱出するかを考えなくちゃね」
「だな。あ〜、非常口みたいなのねぇのかな〜」
「そんな便利なものあったら今頃みんな家でおやつ食ってるよ」
だよなぁ、と慶賀くんは重いため息を吐く。
整備されている宿場町のところ以外は、鬼脈の中には道という道がない。けれど曲がったり坂を登ったりすることはなく基本的にただ真っ直ぐ歩けば目的地へ辿り着けるので、これまでちゃんと整備されることがなかったのだろう。
「思ったんだけどさ、妖たちが動き出す時間までこの場にとどまってるのはどう? まだ妖たちが動き出す時間じゃないから人通りが少ないだけで、騰蛇もいれば誰がそばを通った時に気付くんじゃないかって」
今の時間は妖たちにとっては真夜中、恐らくかなり長い時間を歩いていたはずなのに誰かとすれ違ったような気配は一度も感じなかった。
時間が経って妖たちが動き出せば、眞奉の翼の灯りもあるし助けを求めることもできるかもしれない。
みんなの表情がみるみる明るくなる。
嘉正くんの言う通り、この場に留まるべきかもしれない。
「いや、それじゃ駄目だ」
恵衣くんは険しい顔で静かに首を振った。
「お前ら、今どれくらい時間が経ったか分かるか?」
そう尋ねられてみんなはお互いに顔を見合わせる。
「三時間くらいじゃない?」
「は? この腹の減り具合的に五時間近くは経ってんぞ!」
「俺も来光と同じで三、四時間くらいかな」



