結界を十枚近く通り抜けると、やがて門が見えてくる。平屋の一軒屋、ちょっとした大名屋敷みたいな広さだ。
最後の結界である門をくぐり抜ける。両手が塞がっている彼の代わりに私が玄関と鍵を開けると、その音に気付いたのか、長い廊下の奥からひょこっと皆が顔を出した。
「おかえり〜! ポテチ買えた!?」
「二人ともおかえり。買い出しありがとね」
「おかえり、荷物運ぶの手伝うよ」
ぞろぞろと集まってくる皆に「ごめんね」と呟く。また巫寿が謝ってる、と誰かが笑って玄関は和やかな雰囲気に包まれた。
「あー……一個いい?」
眼鏡を押し上げながら手を挙げた。
「二人とも、随分仲良くなったみたいだね?」
視線が私にではなく私の左手に集まっている感覚がして視線を向ける。私の左手は、まだ彼の右手に包み込まれたままだった。
「こっ、これはこいつがフラフラしてるから! リードだリード!」
ブォン、とまるで野球ボールを投げるかのように勢いよく振り払われた。そんな様子に、アハハッと皆がお腹を抱えて笑い転げる。
ていうかリードってひどい……。
とにかく荷物運ぶよ、と言う一声に皆が買い物袋を中へ運び入れる。
みんなの背中を見つめ、後悔に似た感情がまた大きくなり始めたことに気づき勢いよくかぶりを振った。



